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EMS事情(1)

2019/3/18 月曜日

東興商会の松浦です。今日(19/03/17)から札幌入りしています。今回はEMSについて書いてみようと思います。

EMSは国際郵便のひとつで日本郵便さんが取り扱っている「国際スピード郵便」というサービスです。Express Mail Serviceの略でEMS。日本から中国に向けて商品を発送する国内の越境EC事業者さんや規模の小さい中国人バイヤーや転売業者の殆どがこのEMSを使っているはずです。海外向けの配送手段としては(コンテナ規模の話は別として)EMSのような国際郵便の他にも国際宅配便があるのですが、国際宅配便と比べて費用が安く手間もかからない国際郵便、中でも短期間で届くEMSは中国でお客様が商品を待っているそうした各事業者さんからすればとても使い勝手の良いサービスなんですね。

世界中の多くの地域へ簡単に荷物を発送できるEMSですが、中国市場向けという観点から見てみると若干事情が変わりつつあります。中国に送った商品(貨物)の返送率が上がってきている(元バイヤー言)からです。では何故返送率が上がったのか。こういった状況の変化は中国政府の思惑もありますが、やはり中国の人々の考え方に起因する部分が大きいような気がします。

その理由についてお話しする前に、まずDDPとDDUについて説明をしておく必要があると思います。ちょっと面倒ですがここを理解しておかないと中国のEMS事情について分かりにくくなるので我慢して読み進んでください。できるだけ簡単に書きますのでw

DDPもDDUも貿易する際のルールだと思ってください。国を超えて貨物(商品)を送る際には様々な費用やリスク対策、そして関税などの各種負担が発生しますよね。要はDDP、DDUはそれらについて売主と買主がそれぞれどこまで負担するかの決め事ということになります。DDP(Delivered Duty Paidの略)は全てを売主側が負担し、DDU(Delivered Duty Unpaidの略)は輸入に際しての関税部分を買主側が負担するという形になります。そして、EMSはこのDDUが適用されるんですね。DDUは買主側が関税を負担する、と書きました。つまり、中国向け販売においては「購入者側が関税を負担する」仕組みになる訳です。ここで、僕が上に書いた「中国の人々の考え方」が関係してきます。極端な表現をすると、中国の人々には払わないで済むのであれば税金(関税)を払わないで済ませたい、という考えの人が沢山いるんですね。

一例として、中国人バイヤーが自分の顧客に対して商品の紹介をしたとします。その際に「商品はEMSで発送します。商品にかけられる関税はお客様のご負担になります」と説明をすることはまずありません。何故ならば、そんなことを書いて(本当に関税のかかる形で商品を送って)いると顧客に選んでもらえずライバルたちに負けてしまうからです。例えば、日本国内で10,800円で売っている化粧品を個別の店舗から8,640円で購入し、送料込みで10,800円で販売している。こんな感じです。この価格に関税は一切含まれていませんが、そのことを彼らは絶対に書きません。

その商品が中国の税関を通過する際には本来であれば必ず関税が課税されるはずなのですが、しかし、チェックのために開封されないと課税されないという不思議な事象が発生します。これはどういうことかと言いますと、日本から中国へEMSで送られる貨物の数はそれこそ膨大な数量になる訳です。それを全て中国税関の限られた人員で処理することはできませんので、X線検査で目を付けた貨物を分別し開封検査をするんですね。

分別した貨物を開封する前に税関の職員が添付されている書類(インボイス)を確認します。このインボイスには「この貨物には10,800円で販売した化粧品が入っています」と正確に記載されていなければならないのですが、殆どの貨物がきちんとした内容で申告していないんですね。大体が「この貨物には500円のシャンプーが入っています」と記載されていたりします。何故か。EMSの荷物には「行郵税」という税制が適用されます。この行郵税には50元(約800円)の免税ラインがあるんですね。なので、中国人バイヤーなどが中国向けに商品を発送する際には、正直に10,800円の商品と申告すれば課税されてしまいますから、その50元(約800円)以下の商品だと嘘の申告をして発送する訳です。これは本来であれば「アンダーバリュー」と呼ばれる立派な脱税行為なのですが、上にも書いたように税関側も人員が足りないので全てをチェックしていたら荷物が滞ってしまい大問題になります。そこで、一定数の貨物を任意にチョイスして開封検査をし、残りの貨物はそのまま通してしまうんですね。

しかし中国税関も大分慣れてきていますので、今は大量の貨物の中からX線検査でボトルの形などから化粧品などはほぼ100%分別して選り分けてしまい、後からゆっくりと開封検査をしているそうです。そして開封して中身を確認したらネットでその化粧品がいくらで販売されているものなのか調査をします。そして「この貨物は500円のシャンプーと書いているが、10,000円程度で流通している化粧品だ」という結論に達すると、明らかに免税額である50元を超えていますので次いでいくら課税されるか、という話に進みます。

ここで重要になってくるのが、税関の職員が全ての商品に対しての完全な知識を持ってはいない、という点です。例えば化粧品であれば行郵税は成分や内容量に対する価格によって25%と50%の税率が設定される(2018年11月以前は30%と60%でした)のですが、税関の職員がその区分を判断する詳細な知識を持っていないんですね。中国の人々が好んで購入する日本の化粧品は所謂基礎化粧品が大部分を占めています。基礎化粧品に課せられる税率は行郵税であれば(余程高級品でない限り)25%なのですが、税関の職員にはその違いが分かりません。彼らも本来50%の商品を25%で通してしまえば自分の職責を問われてしまいます。ならば、端から25%の商品も50%の商品も全て50%で通しておけば良いだろう、と考えることになり「この商品は化粧品なので税率は50%だろう」となる訳です。冗談みたいな話ですが本当のことです。

その商品は税関から郵便局に送られ購入者に対して最寄の郵便局から「日本からあなた宛ての荷物が届いているので受取にきてください」と連絡が入ります。購入者が荷物を受け取るだけだと思って郵便局に出向くと、窓口で「この荷物は500円のシャンプーと書いてあったが、中身は10,000円程度の化粧品だったので、50元の免税額を超えてしまっていて行郵税の適用対象となっている。この化粧品に課せられる関税(行郵税)は50%なので5,000円を納付すれば、この商品を引き渡すがどうか?」と言われて驚愕することになります。そもそも、購入する側もそんなルール(EMSはDDU)を知らないという体で発注をかけていますので「自分はきちんと商品代金(10,800円)を支払っている!これ以上の支払いが発生するなんて聞いていない!」と主張します。しかし、郵便局にしれみればそんな話は関係ないので、5,000円を納税するか否か、という選択を突き付けてくるだけです。ここで、大多数の購入者が「何で今更追加で税金を支払わなければならないのか。それならいらない」と受け取り(納税)拒否の選択をするんですね。受け取り拒否をされた貨物(商品)は発送主に対して返送され戻ってくることになります。

いつものことながら今回も長くなってしまったので、次回「EMS事情(2)」に続きます。