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微商とは(2)

2019/2/17 日曜日

東興商会の松浦です。今日は前回「微商とは(1)」の続きです。

僕はまだ日本で「インバウンド」という言葉が一般に定着するよりも早くから訪日外国人観光客に向けた取り組みを開始していたのですが、メインの商材が大手化粧品メーカーのハイブランド(高級化粧品)だったこともあり客層は中国語圏の方々が殆どでした。

欧米の人々は日本の化粧品に興味すらありません(欧米は紫外線が強いので日本の化粧品ではカバーしきれないとも、肌に合う成分が違うとも言われています)し、韓国の人々は自国の化粧品の方が優れていると思っているから日本の化粧品なんて買わない訳です。東南アジアの人々は日本の化粧品は欲しいが(経済力的に)ほんの一握りの人しか買うことができない。中国語圏の人々だけが日本の化粧品、特に基礎化粧品を好んで購入する傾向があるんですね。

そんな中、香港や台湾から来た観光客の方が買いに来てくれていたのは分かっていたのですが、そのうちに中国からの個人旅行客がポツポツと買いに訪れるようになっていきました。この頃はまだ「流行り」が香港や台湾から起こって中国本土がそれを追いかける、という構図だったと思います。

当時、中国からの個人旅行客はごく一部の限られた人々、数百万円の保証金を積むことができる富裕層だけだったんですね。その富裕層が買いに来るようになったということは、必ず一般の人々も買いにくるようになるはずだ、と考えて、免税店の運営を開始しました。対象となる顧客層は中国語圏の人々だけでしたから、決済についても彼らの使いやすいものを用意した方が良かろう、ということで、2015年に「WeChatPay」「Alipay」という2大QR決済が日本に上陸すると、知人に紹介をしてもらい早々に導入をしました。決済事業者さんとはこの頃からの(彼らから見ると古い)ご縁ということもあり、その後色々な新しいサービスが日本に上陸する際には前もって情報を貰えるようになっていきます。その中の1つが公式アカウントの微商、つまり公式微商の情報だったのです。

はじめは単純な話でした。我々のお店で化粧品を購入してくれたお客様から「使い切ってしまったのでリピート購入したい」との連絡が届いたのです。しかし、ここからが大変で、送ることはできても代金を受け取ることができなかったんですね。最終的には日本に住んでいる中国人の知人にお願いして、商品の発送と集金をしてもらうことで何とかクリアしたのですが、これは今後に向けて大きな課題になると感じました。

以来、決済事業者の担当者さんにこうしたケースで決済ができる方法はないのかと協議を重ねていくことになったのですが、そうこうするうちにこんな連絡が入ります。「中国で2~3年前から広まっている新しい仕組みがあって、それが今度日本にも導入されるんです。それを使えばWeChatの中で中国向けのオンライン決済ができるようになります。社長の会社でも是非導入しませんか?」

この連絡があったのが2017年の頭。同年の夏に導入されることになるWeChatの公式アカウント微商、所謂「公式微商」について初めて聞いた訳ですが、この時はまさか後々自分がそれを事業として取り組むことになるとは想像もしませんでした。

その後も何回か導入のお誘いをいただきつつ断り続けていた僕が微商導入に舵を切ったのは2017年末の中国深圳視察がキッカケでした。専門店から免税店を始めるにあたって色々と商材も増えることとなり店舗だけでは全てを展示できなくなるのは分かっていたので、いずれはEC通販を始める必要があるなと考えまして、JECCICA(一般社団法人ジャパンEコマースコンサルタント協会)が毎月開催している勉強会に参加するようになってから数年が経っていたのですが、2017年11月に中国から深圳市の越境EC協会の方々が訪日しJECCICAを訪問した際の会合に参加させてもらい、そして、それから一カ月後に我々JECCICA側も深圳市を訪問することになると、そのメンバーの一人として僕も参加することになったのです。

数日間の深圳市滞在で受けたカルチャーショックについてはまた別の機会に書きますが、この視察中に(全くの偶然でしたが)巨大な展示会場で開催されていた「深圳市第二回微商産業博覧会」に入場することができ、中国の企業が「微商」を使って新しいビジネスをどんどん成功させているという状況を目の当たりにしたり、現地でヒアリングをして「微商」が中国の人々にとって「普通のこと」になっているという状況を知る事ができました。

特に強く感じたのはユーザー(消費者)側と企業側のWinWin関係でした。大分改善されたとは言え、中国ではいまだにEC通販で買い物をした際に「偽物」が届くことがままあります。アリババなどのECモールではそうした事態に対処するために、お客側がOKをしないと決済されない仕組みが導入されているので、(もし偽物が届いたとしても)返品や交換対応をしてもらうことで最終的に目的の商品を入手することができるようになりました。とは言え、無駄な時間を浪費してしまうことに変わりはありません。

一方、微商はアカウント間での商取引なので、ユーザー側から見た時に「企業アカウントから購入すれば必ず本物が届く(返品・交換などの無駄が生じない)」という利点があり、企業側から見ると「自社商品のファンに直接商品の情報を出したり、商品を販売できる」上に「(ECモールなどのプラットフォームを通さないことで)販売手数料などが掛からない⇒利益率がUPする」というメリットが存在する訳です。

「まだ始まって数年(2~3年)しか経っていないが不安はないのか?」という質問に対しては「テンセントが運営している仕組みだし、企業は(テンセントが承認した)公式のアカウントを持っているので信用している」「今ではEC通販以上に普通使いをしている」という回答がとても多く、中には「友人が自分お勧めのメーカーの商品の代理店をやっていたりすると、熱心にお勧めしてくるのでそういうところはちょっとウザい」という話もありましたが「自分のお気に入りのメーカーは設定することで優先的に情報を見ることができるので、自分は常にお気に入りメーカーの情報をチェックしているし、概ね便利に利用している」という意見も多く見られました。

僕自身も含めて日本で微商の存在に気づかす、また話題にも上がらなかったのは、そもそも中国国内だけで完結する仕組みであったため、日本に住んでいる中国の人々が消費者側の立場で使うことがなかったからだと考えています。しかし、我々が気づかなかっただけで、中国国内では当たり前の商流として年々少しずつではありますがその存在感を増やし続けてきていた訳です。

僕はこの「中国の人々が既に一般的な商流として認識している」こと、そして、「日本の企業が(QR決済の時と同様に)こうした新しい仕組みの導入に非常に消極的である」こと。また、僕が導入を打診されていた公式微商はWeChat広告などのテンセントの正規サービスを活用することで効率よく集客することができること。更には中国向けのBtoB(輸出)取引を考えている企業からのテストマーケティングの場の需要があること。これらを鑑みた上で思うところがありまして、日本に帰国するとすぐに公式微商の日本総代理店に連絡をとって訪問し、公式微商を日本企業に広める代理店としての契約を締結すると共に、日本企業として初となる総合販売公式微商を開設する計画がスタートしたのです。

また長くなりましたので「微商とは(3)」に続きます。