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微商とは(1)

2019/2/16 土曜日

東興商会の松浦です。今日は中国の新しい商流である「微商」について書いていきたいと思います。

中国の方と繋がりのある人であれば、ほぼ全員がスマートフォンにインストールしているSNS「WeChat」

このWeChatは中国最大のIT企業であるテンセント(騰訊)が運営しているSNSで、知らない日本の方向けには「中国版LINE」と説明されることが多いのですが、企業規模はテンセントの方が遥かに巨大(2019年1月の時点で株価時価総額世界ランキング8位)です。

また「WeChat」は(中国から見て)外国人向けのサービス名で、中国の人々には「微信(Weixin)」と呼ばれています(SNSとして使える機能等は殆ど同じ)。ここでは混乱するので「WeChat」で統一して話を進めていきたいと思います。

WeChatは総利用者数が14億人以上、また、毎日頻繁に利用しているアクティブユーザー数は10億人を超えている中国最大のSNSツールになります。LINEと同じようにクローズ環境の中で直接つながっているユーザーとチャットや音声通話で連絡が取れる他、「WeChatPay」を使ってお年玉といった送金機能やリアル店舗での支払いやネット決済などもおこなうことが可能です。

この決済機能にカート(通販で言うところの「商品販売枠」)を追加して、WeChatユーザー同士で商取引をできるようにしたのが、いわゆる「微商」だと考えていただければ良いと思います。「微信で商取引をする⇒微商」ですね。(微=マイクロな、商=ビジネス。という解釈もありますが、それはまた別の機会に)

テンセントという会社は元々はゲーム会社です。知らずに遊んでいるスマートフォンのアプリゲームも実はテンセントが開発したものだった、なんてことはよくあります。そのテンセントがここ数年で中国で1・2を争う巨大企業に成長した経緯や理由については弊社開催のセミナーや説明会で時間と要望があればお話ししていますのでここでは割愛します。

目下、テンセントのライバルは中国最大のEC企業アリババグループ(阿里巴巴集団)です。世界ランキングでも常にこの2社が中国1位2位を争っています。両社はSNSや決済の利用者数、決済額など色々な分野でも壮絶なデットヒートを繰り広げています。実は4年前(2015年)にはアリババ側がテンセント側に対してダブルスコア(約10倍)の差をつけて圧倒的なシェアを握っていたのですが、分野によってはテンセントが追い抜いたり、それ以外の分野もどんどん差を縮めるなど、全体として見た時に今はほぼ拮抗するところまでテンセントが肉薄しています。

しかし、テンセントがどう頑張ってもアリババを抜けない分野がありました。それが、EC(インターネット通販)における決済額だったんですね。

中国向け越境ECを検討する企業の担当者さんの中には「中国といえばアリババ」「アリババといえばT-mall(天猫)」だけだと思われている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、このT-mallはアリババが運営するいくつかのECモールの内の1つで、BtoC(企業⇔個人)ECモールでしかありません。これ以外にもCtoC(個人⇔個人)の淘宝(タオバオ)、越境BtoCの天猫国際(T-mall国際)、BtoBのAliExpressなど様々な形態のECモールが存在して取引がおこなわれているのですが、例えば個人向けの国内ECモール「T-mall」「淘宝」だけでも2016年の時点で57兆円弱の年間売上があります。中国の1企業のEC売上が日本の税収と同規模なのです(片や日本最大のECモールである楽天市場の売上は約3兆円です)。当時の中国のEC売上総額が82兆円でしたから、アリババグループだけで実にその7割近くを占めていたことになり、また、この「T-mall」「淘宝」で買い物をする際の支払いはすべてアリババグループの電子決済「Alipay」を使う仕様になっているので、中国EC決済の7割がAlipayで為されている、ということになりますよね。

アリババグループ以外のECモールの支払いはAlipay、WeChatPay、銀聯(UnionPay)、クレジットカード等様々な決済からの選択式です。もしも仮にここの決済を全てWeChatPayが獲得できたとしても全体の3割ですからAlipayの半分にも及びませんし、実際にはそうした他モールでもAlipayを使う人は確実にいますから、結果的にこの分野に関してはアリババ側が圧倒的なシェアを握っている訳です。この圧倒的なアリババ(Alipay)のEC決済シェアを削るべく産み出された仕組みが「微商」なんですね。

元々、決済自体の利用者数はテンセントのWeChatPayがアリババのAlipayを大きく上回っていたのですが、そのユーザーが自分のアカウントの中に商品カートを設置してユーザー同士で商取引ができるようにした訳です。はじめは「微店」といったアプリからスタートして個人間(CtoC)で取引ができるようになりました。例えば「家庭教師のアルバイト」であったり「旅行に行って買ってきたお土産」や「朝ごはんの買い出し」などをWeChatで繋がっている友人間で売買するようになっていったのです。

中国の人々は本当にお金を稼ぐという事に真剣ですので、日本に住んでいる留学生や主婦などがこのツールを使って日本の商品を売るようになるまでそう時間はかかりませんでした。これが所謂「代購(代理購入)」の走りです。この頃は「友人から頼まれた商品をお店で購入して手数料を乗せて販売し中国へ送る」という形が多かったのですが、そのうちに「売れ筋の商品を事前に買いためておいて、淘宝や微店に商品を掲載して中国の友人達に向けて販売する」という貿易商(許認可を取得している訳ではないのであくまで自称ですが)が次々と乱立していきます。彼らが後に「バイヤー」と呼ばれる存在に繋がっていく訳です。

ここまでに何度か出てきた「微店」。実はこの微店はテンセントの公式サービスではありません。テンセント以外の会社が運営している「中国の個人向けの微商アプリのひとつ」なので、当社の(テンセント公式の)微商とは全く別物になります(両者の違いについてはまた別の機会に書きます)。また、他にもいくつか同様のアプリやサービスがあるのですがここでは最大の微店についてだけ書いて後は割愛させていただきますね。

中国系の企業が「10億人のWeChatユーザーに向けて微商を始めませんか?」と営業をかけているようで相談を受けることも多いのですがその殆どは公式微商ではなく微店です。微店は自社の集客に余程自信がある事業者さんじゃない限りあまりお勧めしていません。買い物をしてくれるお客となるフォロワーの集客がとても難しいからです。

また、「微店が公式じゃないなら、テンセントは何で放置してるんだ」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。答えは簡単な話で「淘宝(ひいてはアリババグループ)のシェアを削れるから」なんですね。そして、テンセントの狙いは微商黎明期において微店のシェアが広がることで、一般の人々が「微商で買い物をする事が当たり前」になり、利用者数が増えることにありました。

まずインフラを整えて店を増やし、微商で買い物をするユーザーが増えた。そこに企業向けにBtoC取引ができるように開放することで、魅力的な商品を持っている企業たちが微商に参入し、その商品をユーザーが買うことで更に市場規模が拡大していく。そういう成長サイクルを構築した訳です。取引総額はBtoCの方が大きくなりますから、WeChatPayの決済額もそれに比例して大きくなっていきます。

その思惑は当たり、微商の市場規模は年々大きく成長し続けています。記録の残っている初年度である2015年に1.6兆円だった流通額は翌2016年には6兆円、2017年には11.6兆円へと成長。2018年には20兆円、2020年には40兆円に達するのではないかと言われています。日本の小売ECの市場規模が約30年近くかけて18兆円程ですから、それを4年で抜いてしまう事になります。

この新興のマーケットである「微商市場」ですが、2017年夏から日本の企業も公式微商として参入できるようになっています。しかし、殆どの日本企業はその存在すら知らず、また、知っていたとしても「前例がない」「同業他社が使った結果を見ないと社内稟議をあげられない」といった諸々の理由で導入を見送っているのが実情です。

我々はこの公式微商をはじめ、微商市場というブルーオーシャンマーケットの存在を少しでも多くの日本企業に知ってもらい、そして活用してもらいたいと考えて、自社の公式微商『櫻花日本製品百貨商店』を部分開放して利用してもらうサービスをご提供することにしたのです。

長くなりましたので「微商とは(2)」に続きます。