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微商とは(3)

2019/2/24 日曜日

東興商会の松浦です。今日は前回「微商とは(2)」の続きです。

中国のWeb戦略について、よく耳にするのが「日本とは違って独自ドメインは意味がない」と言う話。日本であれば、何か調べたいことがあればGoogleであったりyahooの検索エンジンで調べるというのが一般的ですよね。殆どの人が検索結果を大いに参考にしてその後の行動選択をするので、企業側は検索結果の上位に自社サイトの中のコンテンツが表示されるようにSEO対策など様々な施策を打っていくことで集客をしていき自社商品の購入へと結びつけていく訳です。そして、どうせ色々な手間をかけるのであれば楽天やYahooの様な大手ECモールではなくて、独自ドメインに構築した自社サイトへ誘客することで利益率を上げよう。大雑把な表現ですが、これが日本の自社サイト・独自ドメイン戦略です。

一方、中国にもBaidu(百度)という検索エンジンが存在しているのですが、その検索結果に対しての受け取り方が、中国の方は我々とはちょっと違うようです。全く検索しない訳ではないのだけれど、WeiboやWeChat(WeChatは外国人向けのサービスで中国国内では微信”weixin”と呼ばれますが、混乱するのでここでは”WeChat”に統一します)といったSNS媒体での検索もする。何ならECモール内でも直接検索してしまう。どちらかと言えば、検索エンジンの結果に従って動くというよりも後者の検索結果の方を「集合知」として参考にしている人が多いんです。(何故そうなるのか、っていう話なんですけれども、まぁ、それはここでは置いておくとして)なので、販売者側からの視点で見て自社の利益の最大化を考えた時に、わざわざ検索エンジンでの検索結果の上位に自社の単独サイトが表示されるように努力して誘客する、所謂「日本型の独自ドメイン施策」は殆ど意味をなさないと考えられていて、そんなことを積み重ねるよりも大手のECモールに出店する方が手っ取り早いよね、と店側は考えてしまう訳です。

ただ、僕はこの部分に関して、ちょっと風色が変わってきたかな?と考えています。中国最大のSNSであるWeChat。そのWeChatの中で多くの企業が自社アカウントを立ち上げています。WeChatというのは日本で言うところのLINEと同じ「閉じた世界」ではありますが、毎日頻繁にアクセスするアクティブユーザーが10億人以上存在する「巨大な閉じた世界」です。その中で自社もしくは自社製品のファン層をフォロワーとして囲い込んでいく。以前はそこまでで終わりでしたが今は微商がありますから、そのファン層に向けて直接商品の販売をおこなうこともできるようになっています。「あれ?これって日本の独自ドメイン戦略と似てないか?」となりませんか?しかし、この微商が出てきて中国市場で浸透し、そして日本の企業が正規の形で活用できるようになったのはつい最近のことなので、殆どの日本企業が従来の流れで中国向けの越境EC戦略に挑んでいるのが現状です。

一般的に、日本の企業が「中国向けに自社製品の販売をしよう!中国市場に進出しよう!」と考えた時に、踏んでいくステップ(段階)というものがあります。そこについてはここで多くを語りませんが、第一段階はインターネットを使った販売、つまり「越境EC」だと思うんですね。そして、中国向けの越境ECについて取り組めと命じられる企業の担当者さんの殆どは国内EC担当と兼任なのではないでしょうか。場合によっては「君EC担当だから海外向けECも簡単にできるでしょ?チャッチャとやってみてよ」的なノリで。新たに海外市場向けの担当者となった人は、ネットで検索したり、EC関連の催しや展示会に赴いて情報を集めようとするはずです。そして、最終的には「中国では日本で主流の自社サイト・独自ドメイン戦略は意味がないらしい」「T-mallのような大手モールに出店するのが一番成功する可能性が高い」という結論に達するのではないでしょうか。そりゃそうです。中国の個人向けEC市場を調べてみれば分かる話ですが、アリババグループのT-mall(BtoC)と淘宝(CtoC)を合計した個人向けEC流通額は2016年には57兆円弱で、2020年には100兆円(6兆元)を達成するとアリババ自身が宣言しています。更に、毎年11月11日(ダブルイレブン)の「独身の日」イベント単日で3兆5000億円の売上をあげた、これは日本最大のECモール楽天市場の年間売上と同規模だ、と全国のニュースでも取り上げられますから、そういう結論に到達するのも無理もないかな、と思います。

そして、その次は費用感を調べようとなり「T-mallに自社出店しようとするなら、様々な費用を鑑みて初年度の予算として3~4000万円程度は見なければ」という情報に接して驚愕する訳ですが、ここまでは大体お決まりのパターンなんですね。この後の展開は企業規模によって変わってきます。日本人中国人を問わず認知されているような大企業であれば予算も潤沢にありますのでアリババのECモールに自社店舗を開設する方向に進むでしょうし、「そんな費用は掛けられない!」と考えた企業は他に手段がないかを模索し始めます。そうすると、色々な所謂「越境ECベンダー」や「越境ECプラットフォーム」がその視野に入ってくるようになります。既にT-mallに自社店舗を持っている企業さんが商品窓を棚貸するケースもあれば、中国ECの圧倒的王者であるアリババではなく2位以下のECモールに出品をするケース、海外のEC企業と提携した日本の物流会社の提供する仕組みを利用するケース、大手商社が構築した越境ECプラットフォームへの出品をするケース、こうしたケースは幾通りもあって細かく書いているとキリがないので割愛しますが、こうした「提供された場」を利用するケースの場合はT-mallに自社出店するよりは費用を抑えることができるんですね。まぁ、あくまで「数千万を要する」というレベルと比べて「安い」という話であって、中小零細規模の企業から見た時に、非常に高額な費用であることには変わりないのですが。

当社にご相談に来られる企業担当者の方がよく言われるのが「売れる保証もないのに費用だけは高い業者が多すぎる」という言葉。本当によく耳にします。確かに高額なんですよね。それこそ、「ちょっとやるだけでも数百万円、少し力を入れるとなればすぐに一千万円を超えてしまう。それでも(T-mallなどへの)自社出店と比べれば安いと(営業トークで)言われるけれど、売れたら売れたで高額な販売手数料を取られるんじゃ利益なんて殆ど残らない」ので、大企業とは言わないまでもそれなりの規模の企業でなければ挑戦すらできない、という話になるんですね。これは、僕自身1ユーザー企業として数年前から色々な越境ECベンダーさんのサービスを見てきて、常々思っていたことではあります。

ただ、今は僕もその越境ECベンダー側に立っていますので、そちら側の視点から見ると仕方ないよなぁ、と思う部分も確かにあるのです。いくら中国の人々の人口が日本の10倍以上いて「爆買い」に見られるように日本の商品を欲しいと考える人々が沢山いるとしても、全ての商品が無条件に売れる訳ではないですよね。寧ろ、売れない商品の方が多いと思います。それでも、数年かけてコツコツと認知度を上げていく努力をしていけば何かのキッカケを転機として無名だった商品が売れ始める可能性もゼロではないのですが、日本の企業さんは1年以内に爆発的に売れる「結果」を求めることが多いように思えます。そうした企業さんは1契約(大体は1年単位)で投げ出してしまう(若しくは別のサービスに乗り換える)ことも多く、越境ECベンダー側から見れば「一緒に育てる前に消えてしまう」形になり、極端に言えば売れるようになって発生する予定だった販売手数料といった見込み利益を得られずに終わってしまうことになります。事業者である以上、ボランティアではありませんので、所謂「生き残り戦略」としてイニシャルコスト部分から手厚く料金を徴収していく方向に行ってしまうこともあるかな、と思うんですね。

当社の『櫻花日本製品百貨商店』(BtoC販売代行サービス)自体、今はサービス提供開始後間もない時期ということもあって「業界最安値」を謳えるレベルの割引価格になっている(一定の利用企業数を確保できた時点で元に戻していくのですが、戻したとしても中国市場向けの支援サービスとして見た時に最安であることは変わらないと思います)のですが、実は今の費用設定についても内部ではメチャクチャ叱られていたりします。「松浦君の理念(一社でも多くの日本の企業さんが海外から外貨を稼ぐグローバル化の「はじめの一歩」を踏み出すお手伝いをするために、高レベルのサービスをお手頃価格で提供する)は分かるが、その高レベルのサービスを提供し続けるためには、そして契約してくれているクライアント企業さんに対してより良い環境を提供したいと考えるのであれば、今すぐに値上げ(最低でも元の価格に戻す)べきだ」と会議の度にコテンパンにやられて「もう少しだけ今の価格帯で」と僕が粘って延長を決める、そんな感じだったりします。

話が横道に逸れてしまいましたが、僕はベンダー側の一人としてある程度の価格帯設定は仕方ないと思います。思いはするのですが、日本の将来を考えたらそれじゃダメだろ、という気持ちも抑えることができないんですね。そんな僕の目の前に現れたのが「微商」であり、テンセントの正規サービスである「公式微商」であった訳です。この新しい仕組みをうまく活用することで、その両者の隙間と需要を埋めることができるかもしれない、そう考えて公式微商を使った越境ECベンダーという世界に足を踏み入れることになります。

またまた長くなってしまったので「微商とは(4)」に続きます。